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株式会社地域まちづくり研究所
株式会社地域まちづくり研究所

まち研を語る

-Visible & Invisible-

外からみたまち研とは

まちづくりという領域を仕事をするにあたり、様々な専門領域を持つ連携企業や、地域を大切に想う住民の方々と出会ってきました。

彼らから見た「まち研」は、果たしてどんな役割や強みをもっているのでしょうか。

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ワーキングの様子
まちづくりイメージ
田中先生のパース

まちの未来を共に考え、共に描く。

田中智之 教授
早稲田大学 理工学術院 創造理工学部

私は熊本駅周辺地域都市空間デザイン会議のメンバーでした。最終的に何と16年も携わることになったのですが、星野裕司さん(熊本大学 工学部土木建築学科 教授)、原田和典さん(崇城大学 芸術学部デザイン学科 教授)という学識経験者とともに、有意義な活動をすることができました。その会議が終了するにあたり、熊本市に対して今後も景観を調整する仕組みを継続して欲しいと依頼したのです。

 熊本市は、熊本市の公共サインを全面的にやり直そうと、ガイドラインをつくることになります。そこにやってきたのが、地域まちづくり研究所の皆さんでした。日本都市計画家協会の理事、私の友人が協会の事務局を務めていたこともあって共通の話題も豊富。最初の出会いから、気心が知れた感覚でした。

地域まちづくり研究所の皆さんは、私たちのような外部専門家やアドバイザーと距離一体感があった。最初からフランクで、妙な業者感もない。ミーティングも和やかな発言と振る舞いで、アットホームにさせる。こういうことって、案外できないものです。

静岡県内では、焼津市のグランドデザイン、沼津市の駅再開発、伊東市の景観整備といった仕事に、地域まちづくり研究所の皆さんとともに携わっています。そこでのワークショップやフィールドワークも、やはり独特のパーソナリティーで地域の人びとを上手く巻き込んでくれる。コンサルタントの立ち位置として出過ぎずに、伴走してくれる。委員会の場でも立場を超えてちゃんと発言し、テーマに沿った話題提供がある。課題を踏まえて、切れのある提案をもってきてくれる。

私の趣味であり仕事に繋がっているのは、パースを描くこと。建築はもとより、駅や都市、九州のように広大なエリアも。ペンを動かして絵を描くのは私ですが、プロジェクトが創造する未来を、共に考え、共に描くパートナーとして、優れた仕事をしてくれています。

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水口氏と海野氏
 商店街の様子
通りの整備イメージ案
ワークショップで使用した模型

このまちを歩くひとに空間の価値を提供したいね。

水口隆太さん
沼津市 町方町・通横町第一地区市街地再開発組合 理事長
海野伸男さん
沼津市 町方町・通横町第一地区市街地再開発組合 副理事長

町方町(まちかたまち)は、もともと沼津城の城下町でしてね。歴史を掘り下げると、面白いまちなんです。沼津市立第一小学校は、明治元年に西周(にし あまね)を初代校長に迎えて開校した沼津兵学校にルーツを持つ、日本で一番最初に開校した近代的な小学校だったりね。

町方町商店街は、これも日本で始めての共同建築様式による公共歩廊空間が連続する商店街として昭和29年に誕生しました。その後、商業の中心が駅周辺等に移動・分散し、建物の老朽化等もあって商店街のポテンシャルが低下してきたことから、長く時間がかかりましたが再開発によるまちづくりをすすめています。

当然のようにマンションが先行しましたが、特に歩道や植栽や空間に着目して取り組んでいます。人が集まり、人が歩くまちに戻そうと。沼津市も同じ考えで、もう一度中心市街地に人を集めてコンパクトシティにしたい、と。

その意味では、私たちの取り組みは市の今後の都市計画の方向性に一石を投じるものでしょうね。実際、行政とは上手く付き合わせてもらったし、うまく動いた。まだ年くらいのお付き合いだけど、こうして地域まちづくり研究所の皆さんとも出会えた。

この人たちが示してくれる計画案は、その切り口がすごく新鮮で、目から鱗のことが良くあるんだ。お世辞抜きにね。商いのための視点じゃなくて、まちを歩くひとに価値を提供する空間、という視点なんだね。今までと違うよ。だから、次世代にとって面白いまちをつくっていく布石になる。

開発とか建築とか、おおよそカタチとか結果にこだわりがちだよね。しかし、地域まちづくり研究所の皆さんは、ここに関わる人がどういう活動をしていくか、出来上がったものをどう動かすべきか、とプロセスやオペレーションを大切にしてくれる。その先に繋がるであろうことを、みんなで一生懸命考えようと、そのことに時間を費やしてくれる。

丸亀商店街や川越の景観形成を担当した都市計画家の西郷真理子さんとお付き合いさせてもらった時期がありましてね、その時に「デザインコード」を学びました。おかげさまで、地域まちづくり研究所の皆さんと協議する場面での共通言語になっています。

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横須賀のまちなみ
三熊野神社大祭
横須賀景観整備機構のステッカーが貼られた家

その土地の人になりきろうとするのが良いよね。

芳野康広さん
芳野一級建築士事務所 代表/横須賀景観整備機構(静岡県掛川市横須賀)

横須賀城の城下町だったこのまちには、由緒ある神社や風情ある建造物が建ち並び、城主がこの地にもたらした江戸の祭り文化が連綿と継承され、今日の三熊野神社大祭に至ります。この街道の景観と祭りが大好きな住民によって、良好な歴史的風致が形成されています。

大須賀建築士住まいの研究会の発足を皮切りに、まちなみ保全に取組みましたが、まちなみの変化を止めるまでには至りませんでした。平成年に掛川市の景観条例に基づく景観形成重点地区の第号に認定され、建物の外観や色彩、屋外広告物などに配慮を求め、建て替えや修復時には市への届け出が必要となりましたが、法的拘束力がないことから、区域内の住民に制度内容の理解が深まっていないことが課題となっていました。そこに、掛川市の都市政策課の担当が地域まちづくり研究所の皆さんを連れて来たんですね。

私は建築士であり、まちの景観形成を担って来た自負もあり、まちづくりにも一言持っていました。ですので、果たしてこのまち独特のくせを読みとることができるのか、横須賀にはマッチしない全く違う地域の事例をコピーして持ってくるのではないか、と疑心暗鬼で彼らを迎えたわけです。

 顔合わせを終え、ワーキングが始まりました。すると、セオリーを押し付けない。親身になって一緒に考えてくれる。出て来たアイデアの掘り下げ方も深い。なかなかだな、と。つまり、その土地の人になりきろうと一生懸命努力する感じがあるのです。あ、この人たちなら一緒に酒が飲めるな、三熊野神社大祭をちゃんと案内したいな、と思いましたね。

平成年、私もメンバーの一員となって「横須賀景観整備機構」が発足。住民と同じ目線から届出方法の周知や家屋改修への助言などを行い、相談窓口を充実させることで景観保全に向けた取り組みを加速させていきます。地域まちづくり研究所の皆さんと出会ってから2年後のことでした。

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まち歩きの様子
ワーキングの様子
ミーティングの様子

キーワードは、ローカル=個性 住民+移住者 開発→再生

⾼鍋剛さん
株式会社都市環境研究所 取締役/⽇本都市計画家協会 副会⻑

都市計画に携る人の多くは、大学の建築学科の中にある都市計画系の研究室に入り、大学年から大学院生辺りでいろんな事務所でアルバイトをしたりするわけですね。私自身もそうして建築単体より都市計画やまちのことを考える仕事に惹かれました。仙台で生まれ、岡山、茨城、東京、千葉、川崎、長野と移り住みましたから、人・文化・習慣・食など地域によって大きく違うものだという実体験があって、いろんなまちの個性を活かす仕事に就きました。

地域まちづくり研究所とは、震災後に漁村復興の仕事をご一緒しました。震災復興はいくつかの事務所と一緒に仕事をしたけど、いちばんピタッと来ましたね。住民とのミーティングでも、喋らない漁師をどうやって喋らすか、みたいな経験をしてきたなかで、そういう人から話を引き出す技術など感心しました。女性スタッフが優秀で、昨日も伊豆市で住民とのワークショップをご一緒して、ワークショップそのもののやり方、丁寧な聞き取り方、まとめ方が見事でした。決め細やかで、神経を張り巡らしていて。参加者みんなの顔をちゃんと見て喋る、目立たないけど大切な意見をこぼれないようにする。そういうことができる事務所だと思っています。

私たちの事務所とは何が違うかというと、われわれは“ローカル”を持っていないこと。地方の事務所は、ちゃんとローカルを持っていて、知っていて、繋がっている。もちろん、行政とも。だから他所に行っても、そのローカル的な皮膚感覚を持っているから強い。

開発型のまちづくりから、再生型のまちづくりの時代となりました。ローカルは人口も経済もシュリンクしてきています。しかし、問題は深刻化するからこそ、まちのことを考える人は逆に増えています。北陸にある私の知人の事務所には、まちの再生について相談が山のように来る。ローカルのことをよく知り、地域の核となるまちづくりコンサルタントの重要度は、逆に高まっているのです。

いま、能登の復興を頑張っているのは移住者たちです。自己満足型ではなくて、しっかりローカルに根付いて信頼を築き、住民と協働できる移住者です。そこに私たちのような外部の人間が対話と構想づくりを手伝う。人口が減ることより、人材が減ることが問題であって、「あの人が居ればなんとかなる」わけです。だからそういう人たちと対話ができる事務所が必要ですね。